中学1年生へ|英語と数学では、「難しさの種類」が違います
中学校生活が始まって、約4か月。
最初は少し余裕があった英語や数学も、少しずつ「中学生らしい勉強」になってきました。
中学1年生の夏は、英語も数学も、最初の山場を迎える時期です。
ただし、英語と数学では、難しさの種類が少し違います。
数学は、「数字ならできる」を「文字でもできる」に変える時期です
たとえば、次の問題を考えてみてください。
時速60kmで2時間進みました。
何km進みますか。
これは、
60×2=120
ですから、120kmと答えられる人が多いでしょう。
では、少しだけ変えてみます。
時速60kmで10分間進みました。
何km進みますか。
先ほどまではすぐに答えられたのに、「10分」となった途端、少し怪しくなる人が出てきます。
時速60kmは、1時間、つまり60分で60km進む速さです。したがって、10分間に進む道のりは10kmです。
ここまでは、中学校の数学ではありません。小学校で学習した算数の内容です。
ところが、中学校では、ここから数字が文字に変わります。
時速 a kmで b 分間進みました。
進んだ道のりを、aとbを使った式で表しなさい。
このあたりが、中学数学の最初の山場になります。
数字であれば、何となく計算できた問題も、aやbに変わった途端、
「何と何をかければいいの?」
「b分は、どうすればいいの?」
「どうして60で割るの?」
と、何が何だかわからなくなってしまうことがあります。
最初の目標は、それを理解して、自分で式を作れるようになることです。
小学校の内容を、いったん使える形に戻します
速さだけではありません。
割合やパーセントの問題も、同じです。
中学校では、小学校で学んだ速さ・割合・パーセントの考え方を使いながら、文字式や方程式を作ります。
ところが、小学校の内容があいまいなまま文字が入ってくると、急に難しく見えてしまいます。
そのため、この夏は中学校の問題だけを先へ進めるのではなく、必要なところは小学校の内容まで戻って復習します。
数字を使った問題を自分で考えられるようにする。
単位が変わっても処理できるようにする。
割合やパーセントを自由自在に扱えるようにする。
その土台を作ってから、数字を文字に置き換えていきます。
中学生に小学校の内容を復習させると、「前の勉強に戻っている」と感じられるかもしれません。
しかし、これは後戻りではありません。
中学校の数学を理解するために、必要な土台を固め直しているのです。
この夏だけで終わる勉強ではありません
毎年、中学生を見ていると、速さや割合の力を完成させるには、夏期集中だけでは足りません。
もちろん、この夏にしっかり取り組めば、大きく前進できます。
ただ、一度学習しただけで、速さ・割合・パーセントを自由自在に扱えるようになるわけではありません。
そこで、この夏に一度しっかり学習し、さらに中学1年生の後期期末テストが終わる2月ごろから、もう一度取り組む予定です。
2月、3月と繰り返し練習し、必要に応じて新学年に入ってからも確認します。
なぜ、そこまで時間をかけるのか。
中学2年生になると、連立方程式を使った文章問題が出てくるからです。
そのときに、速さや割合の意味がわからない状態では、連立方程式を作るところまで進めません。
反対に、速さ・割合・パーセントの考え方が身についていれば、
「何をにするのか」
「何をにするのか」
「どの数量を使って式を作るのか」
を落ち着いて考えられます。
目標は、この夏に一度できるようにすることだけではありません。
来年、中学2年生の今ごろに連立方程式の文章問題を学ぶとき、
「速さの問題なら、式を作れます」
「割合の問題も大丈夫です」
と、自信を持って答えられる力を完成させることです。
この夏から来年の学習までをつなげて、段階的に力を育てていきます。
数学が嫌いだった子が、一番点を取れる教科に変わった話
以前、算数が苦手で、算数を嫌いだと感じていた子がいました。
その子が中学1年生になり、初めて文字式を学んだときのことです。
文字を使って数量を表したり、文章を式に直したりする難しさにぶつかり、かなり大きなショックを受けました。
小学校の算数も好きではなかったのに、さらに文字まで出てきたのです。
本人も、
「これでは、今まで嫌いだった算数が、中学校では完全にできなくなってしまう」
と感じたのだと思います。
そして、
「中学1年生のスタートから、このままではまずい」
と一念発起しました。
その子が繰り返したのは、塾のテキストの第2章「文字式」の中の「数量の表し方」のページです。
特別な難問集ではありません。
中学1年生の文字式の、基本となるページです。だから算数内容から始まります。
そのページを一度や二度で終わらせませんでした。
夏休みが終わって学校が始まっても、秋になっても、冬になっても、繰り返しました。
学校ではすでに別の単元を学習している時期にも、家庭学習では「数量の表し方」のページに戻りました。
毎回、解き直したルーズリーフを塾に持ってきました。
その繰り返しは、中学2年生の夏まで続きました。
取り組んだ回数は、15回以上です。
同じページを、何度も何度も解きました。
すると、中2の秋ごろには、数学がその子にとって一番点を取れる教科になっていました。
教えていた私が驚くほどの頑張りでした。
もちろん、全員が同じページを十数回やらなければならないわけではありません。
ただ、この子の姿からよくわかることがあります。
中学1年生で文字式につまずいたからといって、その先の数学ができないと決まったわけではないということです。
苦手なところを見つけ、必要なところに戻り、できるようになるまで繰り返せば、数学は変わります。
一度できなかったことは、「自分には無理」という証拠ではありません。
「ここをもう一度練習すればよい」と教えてくれる目印です。
英語は、難しくないからこそ油断できません
一方、英語では、これから三人称単数のsなど、新しいルールを学びます。
「三人称単数」という名前を聞くと難しそうですが、ルールそのものは、それほど複雑ではありません。
しかし、ここに英語の怖さがあります。
ルールが難しくないため、授業中は多くの子が「わかった」と感じます。
ところが、実際に英文を書かせてみると、
- 主語がheやsheなのに、動詞にsがついていない
- 否定文なのに、doesn’tの後ろの動詞にもsをつけてしまう
- 疑問文になると、doとdoesが混ざってしまう
ということが起こります。
「言われればわかる」
「説明されれば思い出す」
これは、わかっていないわけではありません。
ただ、まだ「自分で使えるところ」までは身についていない状態です。
考えなくても自然に使える。
普通に英文を書いても間違えない。
そこまで練習して、初めて本当に使える英語になります。
「わかる」と「できる」の間を埋める夏にします
数学には、考え方を理解しなければ先へ進めない難しさがあります。
英語には、ルールは難しくなくても、何度も使って確実に身につけなければならない難しさがあります。
同じように問題を解いているだけでは、なかなか力はつきません。
数学では、考え方がつながるまで丁寧に確認すること。
英語では、正しい形が自然に出てくるまで繰り返すこと。
それぞれの教科に合った勉強が必要です。
夏期集中では、ただ先へ進むことだけを目標にはしません。
問題を解いている様子や間違え方を見ながら、
「これは理解が足りないのか」
「理解はしているけれど、練習が足りないのか」
「小学校の内容まで戻った方がよいのか」
を見分け、一人ひとりに必要な学習を進めていきます。
保護者の方から見ると、子どもが「わかった」と言っていれば、つい安心したくなるものです。
けれども、中学の勉強では、「わかった」の先にある「自分一人でできる」まで確認することが、とても大切です。
目の前のテストだけではなく、半年後、1年後に困らないところまで見通して指導していきます。
中学1年生の夏は、まだ十分に間に合います
もし今、少し苦手なところがあっても、心配しすぎる必要はありません。
中学1年生の夏なら、まだ十分に戻れます。
むしろ、内容が本格的に難しくなる前の今だからこそ、小さなつまずきを見つけて直しておくことに大きな意味があります。
数学は、わからないところをそのままにしない。
英語は、「知っている」で終わらせず、自然に使えるまで練習する。
そして、この夏に学んだことを一度きりで終わらせず、必要な時期にもう一度学び直す。
夏が終わったときに、
「前より数学の考え方がわかるようになった」
「英語を迷わず書けるようになった」
そう感じられるように。
そして来年、中学2年生の文章問題に出会ったときに、
「あのとき勉強したことが、ここにつながっている」
と感じられるように。
私も目の前の様子をしっかり見ながら、一人ひとりの力を育てていきます。
中学校最初の山場を、一緒に越えていきましょう。

